『森から世界を変える
ソーシャルビジネスアワード』
インドネシア・スタディツアー
REDD+ オフィシャル特派員の
経験・知見を共有するための
帰国報告座談会レポート

インドネシアの森林と
ソーシャルビジネス、
行って、見て、
どう感じた?

(撮影:門田正吾)

自らのビジネスアイデアの可能性を現地で実際に探るという大きな目的を持ってインドネシアでのスタディツアーに参加したREDD+ オフィシャル特派員4人の声を、座談会スタイルで紹介します。

2017年9月30日、無事インドネシアのスタディツアーから帰国したREDD+オフィシャル特派員の4人を迎え、帰国報告座談会が行われました。 座談会には、7月のワークショップや8月のプレゼンテーションの参加者、また昨年のREDD+オフィシャル特派員も加わり、充実した座談会になりました。

その様子を2回にわたりご紹介します。第1弾は、主にスタディツアーの渡航先であるインドネシア現地での様子を中心に、そして第2弾は、ソーシャルビジネスと森林保全の可能性を中心にお伝えします。

現地の人と話して気づいた
インドネシアの本当の姿

門田正吾さん ぼくは渡航前、インドネシアにも既に様々な組織があって、問題解決は既にほかの人たちがやっていると思っていました。学生レベルで考えていることはもうすでにやっていると。けれども意外にそうじゃない、と現地で思いましたね。自分が学生としてでもできることはたくさんあると思いました。

高橋美佐紀さん カカオ農家の方々と話しをして、彼らが抱えている苦しみ、直面している環境問題など、詳しく知ることが出来ました。政府や協力機関などによるさまざまな解決策があると聞きましたが、草の根である農家の方々にはまだ行き届いていないこともある、ということを実感しました。私はそんな人たちの助けになることを仕事としてやっていけたらと強く思いました。


左:高橋美佐紀さん、右:門田正吾さん

黒岩健一さん 渡航前は、森林伐採は、倫理や教育の問題など個人の問題なのではないかと漠然と考えていました。しかし、実際に現地の方々のお話をお聞きする中で、仕事もない、インフラもないような社会環境の中では、仕方なく森林を伐採せざるを得ない状況にあり、これがむしろ問題だと感じました。森林伐採以外の収入源、例えば農業の生産性の向上や販路の拡大、他のビジネスを作ることが重要だと思いました。そう考えると、森林伐採の問題は、単に森林の問題というだけではなく、農業の問題でもあり、産業の問題でもあり、それらを解決することが森林保全につながると思いました。森林以外の専門の方も関わって解決に携わることが、森林保全につながるように思います。


黒岩健一さん

赤塚千春さん 現地の実態を知ることの重要性を一番感じました。私は大学を出て企業でCSRの仕事をしています。その過程において、環境問題や解決方法を情報としては知っていました。でも、(実際に現地に)行ったからこそ、実感できたものがあると思います。


赤塚千春さん

高橋さん この『森から世界を変えるREDD+ プラットフォーム』には、森林を軸にして、いろんな人がそれぞれの立場で関わっています。でも、そうした取り組みは他にはなかなかないのだとも思いました。このような観点からも、私にとって今回の渡航は大変勉強になり、次につながるものになりました。

赤塚さん それは私も同感で、同じ思いを持っていろんな方々が働いているということや、お互いに連携し、学び合い、高め合っている姿を見ることができました。JICAのような機関があったり、生産者や、いろんなプレイヤーがいて。今回はそれぞれの立場の方々からの意見を聞くことができて自分自身刺激を受けました。


現地とのディスカッションの様子(撮影:赤塚千春)

印象に残った
トウモロコシ畑

黒岩さん トウモロコシ畑が印象に強く残りました。写真は、山頂付近を切り拓いてトウモロコシが栽培されている様子です。その風景が衝撃的でした。元々は山の下の方でトウモロコシは栽培されていたようですが、土壌の質が悪くなり、どんどん山の上の方に栽培地域が上がっていったそうです。結果的に、森がどんどんなくなっていました。

農家さんからは、トウモロコシの収穫は、重労働であり、手作業での刈り取りは大変とお聞きしていました。それを山間部で行うのはもっと大変だと思います。こうした大変な作業を、土地の制約等から山で行わざるを得ない現状を目の当たりにし、農家さんの大変さを痛感しました。また、あれだけ木がなくなると、土砂崩れや洪水とかも問題になっているようです。


トウモロコシ畑(撮影:黒岩健一)

豊嶋絵美さん(JICA地球環境部) 森林の農地への転換は大きな問題になるので、森林と農業はリンクしています。こうして現地を見るとわかりやすいのですが、なかなか知っている人は多くないかもしれません。

黒岩さん 確かに、農業の取り組みが森林に直結するというのは今まであまり意識はしていませんでした。

飛行機から見た
リアルな土砂流出

高橋さん 私も農業用地のことで印象深い風景があったので、写真に撮ってきました。飛行機から見た写真ですが、この茶色い部分はすべて山の土砂が河川から流出しているところなんです。


飛行機から見た土砂流出の様子(撮影:高橋美佐紀)

黒岩さんの話にもあったように、あり得ないくらいの急斜面にトウモロコシが植え付けられているので、どんどんと土が流れてしまうのです。この間、流域系の専門の方にこの写真を見ていただいたのですが、「通常だったらこの土砂流出量はあり得ない。」という話をされていました。陸地の森林破壊、農業用地転用の影響が、河川や海にも出ていることがはっきりと分かる写真です。

もうひとつ、インドネシアで広く栽培されているのがオイルパーム(油ヤシ)の農地ですが、見た限り碁盤の目のようにプランテーションが並んでいる。これも先ほどのように河川への土壌流出の原因の一つと考えられますが、想像をはるかに超えた広さでした。 今まで論文で読んでいただけの問題を実際に見ることができ、問題の深刻さを実感しましたね。


パームツリーの農地(撮影:高橋美佐紀)

現地で触れ合った
インドネシアの人の優しさと
ゴミの問題

赤塚さん インドネシア人の笑顔や優しさが強く記憶に残っています。私はインドネシアへは3回行ったことがありますが、過去2回よりその笑顔が印象に残っています。現地の人と間違えられたのか、インドネシア語で3回くらい声をかけられたんですよ(笑)。みなさんとても優しくて。基本初めてでも笑顔で握手して。会話が成り立つ、フレンドリーでした。今回は特に。


現地中学校訪問の様子。大歓迎!(撮影:赤塚千春)

竹村さん(昨年のREDD+オフィシャル特派員) あまり観光地ではないところに行ったので、昨年行ったぼくらの時も大歓迎でした。日本人が珍しいのかもしれません。

高橋さん 私も訪問した学校での環境教育はすばらしく、日本の学校以上だと思いました。オーガニックの農園や肥料をつくるコンポストを生徒たちがつくり、有機野菜を育てている。それだけではなく、そこでできた野菜、例えばキャッサバをチップスにしていましたね。お土産の写真の真ん中です。本当に感動しました。


いただいたおみやげ。真ん中のチップスがキャッサバ。(撮影:高橋美佐紀)

赤塚さん そうですね。でも、一方気になったのがゴミ問題です。いたるところに平気でゴミが捨てられていました。現地の中学校に訪問した際にも、外部から訪問してきていた大人が、その学校の敷地内で、パッとゴミを捨てたんですよ。それが衝撃でした。それが平気なものとされている一方、そうした状況を変えなきゃいけないということで子ども達に対して環境教育にすごく力を入れているのもわかりました。

豊嶋さん 今回訪問した学校は、非常に熱心に環境教育に取り組んでいる学校だったのですが、環境に対する意識はすぐに変わるわけではないので、今の子どもたちが大人になったときに変わるようなスパンの長い取り組みが必要ですね。

赤塚さん 私たちのビジネスアイデアであるVR事業を考えていく上で、綺麗な景色は重要です。撮影は住民に依頼します。この撮影にあたり、景色の中にゴミがあってはいけない、という考えを広めることで、大人の意識をもかえるきっかけになるかもしれない、と思いました。

学生にもできることが
たくさんある

門田さん ぼくはジャカルタでちょっと体調を崩したので、みんなとは別行動でジャカルタに残って色々リサーチしていました。おかげで国際アグロフォレストリー研究センター(ICRAF)というところへ訪問ができました。その名の通り、アグロフォレストリーを専門に研究している機関です。でも、そこの職員さんがぼくたちのビジネスアイデアである「スーパーフード*」を知らなかったことは衝撃でした。農業に関連する専門家・研究者はなんでも全部知っていると思っていたんです。でも、そうじゃない、自分たちで学んでいかせるチャンスがたくさんあるんだと思った。自分で培ったものがあれば学生でもチャンスはあると思う。 インドネシアでもスーパーフードの栽培には可能性があると思いました。


国際アグロフォレストリー研究センターにて

高橋さん 意外だったのは、インドネシアでは有機野菜の人気が出てきていたことです。実際に、ボアレモで米やエッセンシャルオイルを認証して生産している方、そしてカカオ農家の方も、手間がかかってもいいので有機肥料や化学薬品ではない殺虫剤を使いたいということをおっしゃっていました。


現地マーケットの様子(撮影:門田正吾)

門田さん ぼく自身は実は、今までは環境問題を意識することはあまりなかった。でも、農家の方々の高いモチベーション、たとえば自分たちが作ったものを輸出したい、新しいビジネスを求めているとか、それと、森林保全のために行動している人々を見て、まだまだ出来ることがあると思った。まだまだ草の根には手が回っていないのを見ると、ほかの誰かじゃなくて、体験した自分が動かなきゃいけないと思いました。

* スーパーフード:栄養バランスに優れ、一般的な食品より栄養価が高い食品であること。 あるいは、ある一部の栄養・健康成分が突出して多く含まれる食品であること。

*第2回に続きます


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