地球温暖化対策と途上国の森林保全(REDD+)~日本企業のビジネスチャンスとは~

開催日時:2016年12月16日(金)15:00~17:20
会場:国連大学 ウ・タント国際会議場(東京都渋谷区)
共催:森から世界を変えるREDD+プラットフォーム
日刊工業新聞社
概要・プログラムはこちら

【Summary】

一昔前、途上国における森林保全といえば、「木を切らない、木を植える」活動が中心でした。しかし、これだけでは森林を守る上では十分ではない場合があります。REDD+は、途上国における森林減少・劣化の抑制や持続可能な森林経営などによって温室効果ガス排出量を削減、あるいはその吸収量を増大させる努力にインセンティブを与える気候変動対策です。例えば、住民に対する配慮であれば、住民が生計のために森林の木を伐っているならば、木を伐る代わりとなる生計手段を提供することなどがあります。

REDD+実施者は温室効果ガスの排出量削減や吸収量増大に対し、排出削減クレジットを得て、その売却により利益を得ることができるようになります。このためには、森林の保全活動に加えて、途上国政府の制度づくり、森林に蓄積されている炭素量のモニタリング、生物多様性や地域住民に対する配慮など様々な活動が不可欠です。また企業にとってREDD+は持てる技術やノウハウを活かして地球温暖化対策や途上国の持続的な発展に寄与する等の社会貢献を行うとともに、排出削減クレジットの取引による利益を得るビジネスチャンスであると考えています。

「森から世界を変えるREDD+プラットフォーム」では、これまで企業をはじめとする官民のメンバー間の情報・知見共有や意見交換を通じて、REDD+を含む森林保全活動の現実的なあり方を検討してきました。これまでの経験を踏まえ、より多くの方たちにREDD+がもたらすビジネスチャンスの可能性に気づいていただくために、日刊工業新聞社様との共催イベントを企画しました。

基調講演1「地球温暖化対策と日本の役割」では、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン代表理事の有馬利男氏から、企業経営の立場からREDD+の重要性が示されました。基調講演2「REDD+と日本企業の関わり」では、早稲田大学 天野正博教授から、ご自身がREDD+活動に関わってきた経験から、企業がREDD+に参入するにあたっての3つの問題点が指摘されました。そしてコンサベーション・インターナショナル・ジャパン(CIジャパン)の浦口あや氏からは、様々なREDD+の成功事例が紹介されました。最後に「日本企業のREDD+参入チャンスにどう対応すべきか?」と題したパネルディスカッションでは、REDD+に参入するメリットのほか、注意点などについて意見が交わされました。

【Report】

当日のポイントを、プログラムに沿ってご紹介します。

基調講演1
地球温暖化対策と日本企業の役割


有馬利男氏(グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン代表理事/元富士ゼロックス社長)

グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン代表理事の有馬利男氏は、現在の立場と富士ゼロックスの社長としての経験から、企業経営から見た地球温暖化対策/森林保全について講演しました。

2000年に設立した「国連グローバル・コンパクト」ならびに2015年に国連総会で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」は、世界のビジネスリーダーに対して、現代社会の解決すべき問題を示しました。こうした世界的な流れの中で、企業は変化し始めています。例えば企業CSRでは、従来は自社の事業に根ざしたインサイドアウトの活動を行っていましたが、自社の外にある社会的課題を取り込むアウトサイドインの活動へと移行しており、新たなビジネスモデルや技術が生まれているケースも散見されます。少しずつ外へ向かっていけば良いことなので、この変化を難しく考える必要はありませんが、グローバル・コンパクトなどが提供するプラットフォームからの支援や他企業とのマッチングを上手に利用すると、スムーズに進められるでしょう。そこに新しいビジネスチャンスが眠っています。自然、環境、森林に関する課題はたくさんあるので、REDD+にも取り組んで欲しいと考えています。

基調講演2
REDD+と日本企業の関わり


天野正博氏(早稲田大学 人間科学学術院 人間環境科学科 教授)

続いて、早稲田大学 人間科学学術院 人間環境科学科の天野正博教授から、REDD+事業を推進するための現状の問題点、1)資金メカニズム、2)実際の森林保全活動、3)企業の参入の3点が指摘されました。

REDD+における資金メカニズムは、森林保全で発生したクレジットを買い取る“結果払い”が基本です。しかし、そもそもREDD+の活動を始めるには事前投資が必要なため、REDD+にはREDD+活動実施のための支払いと結果払いの2種類の資金を提供する柔軟なメカニズムが必要です。特にEDD+活動実施のための支払いの資金援助は民間の協力が必要と考えられます。2つ目の問題点は、REDD+における森林保全活動では、従来のプロジェクトレベルの活動よりも規模の大きい準国または国レベルでの活動が行われるため、複数の企業や公的機関の連携が必要だということです。また、大規模な活動にはコーディネートが不可欠で、その役割はJICAのような組織が担うのがいいでしょう。うまくコーディネートできれば 3) の民間企業の参入も促されると考えています。

事例報告
グローバル企業と日本の民間企業の取組み


浦口あや氏(一般社団法人 コンサベーション・インターナショナル・ジャパン)

CIジャパンの浦口あや氏は、環境条件も支援体制も異なる3つのREDD+事業を紹介。そこに日本企業にとってのビジネスチャンスがあると報告しました。

ペルーのアルトマヨ保護区では、ディズニー社などが関わるREDD+事業が進んでいます。「森林保全を行えば、生計を支える技術を提供する」という保全契約を農民と交わしたことにより事業は成功。合わせて627万tのCO2削減が達成されました。インドネシアのゴロンタロ州では、兼松株式会社による二国間クレジット(JCM)を利用した事業が行われています。

DariKや東京フーズなどの日本のチョコレート会社との連携により、トウモロコシの焼畑栽培から、森を守るためのカカオ栽培への移行を推進し、焼畑へによる森林減少の抑制が確認されています。フィリピンのキリノ州でも、森林破壊につながらない代替生計手段の導入と森林再生を両輪とした取り組みが進んでいます。企業は今後ますますCO2排出削減を求められるでしょう。

CO2排出削減の努力は必要ですが、それでも排出してしまう分については、REDD+のクレジットでオフセット(埋め合わせ)することを考慮にいれてはどうでしょうか。また、森林機能の保全回復はCO2削減のみならず、水問題や生物多様性の保全へも貢献します。フィリピンの事例のように新しいビジネスが生まれる可能性もあり、日本企業にもビジネスチャンスではないでしょうか。

パネルディスカッション
日本企業のREDD+参入チャンスにどう対応すべきか?

日刊工業新聞社の松木喬編集委員をファシリテーターに、講演を行った天野正博教授、浦口あや氏に国際緑化推進センター(JIFPRO)の堀正彦専務理事とJICA地球環境部の宍戸健一審議役兼次長を加え、REDD+への理解を深めるためのパネルディスカッションが行われました。

クレジットの扱いなど、まだ不確定な要素はあるREDD+ですが、パリ協定に定められた目標達成のためにも、必ず動き出すことになります。その際には、多くの企業の積極的な参入が望まれます。参入を検討する際には、様々な規模や条件の取り組みがあるので、自社に合った関わり方を検討する必要があります。REDD+は民間企業にとっても魅力的な事業と成り得ます。JIFPROは森林保全を行うと同時に、森林を効果的に利用することを考えており、産業となりそうな森林資源を見つけて、民間企業とのマッチメイキングを行っているということでした。

REDD+広大な森林を対象にした、森林保全だけではなく、生物多様性保全や地域住民に対する配慮など、複数の分野にわたる活動のため、その実施には官民の連携が欠かせません。最後に、REDD+の取組みがその地域の土地の利用の変更を伴う活動であり、暮らす人々の生活を変える可能性があるということを心に留めた上で、まずはREDD+を新たなビジネスチャンスとして企業をはじめ、より多くの関係者の関心を高めていくことが必要であることが提案され、パネルディスカッションを終了しました。

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