平成29年度第3回ナレッジ分科会ナレッジセミナー
緑の気候基金(GCF)の取組みの進捗状況
開催報告

開催日時:2017年8月31日 (木曜日) 14時00分~16時45分
会場:JICA市ヶ谷ビル 2F国際会議場(東京都新宿区市谷本村町10-5)
概要・プログラムはこちら

途上国の気候変動対策の主要資金である緑の気候基金(GCF)では、昨年10月の第14回理事会において、成果支払いを含め、REDDプラスの全フェーズの支援を行うことが決定されました。また、今年の7月上旬に韓国ソンドで開催された第17回理事会では、早期フェーズの支援や成果支払いのモダリティといったREDDプラスの技術的課題について本格的に検討されるとともに、国際協力機構(JICA)及び三菱東京UFJ銀行が、我が国で初めてGCFの認証機関(AE)として承認されました。

そこで、「森から世界を変えるREDD+プラットフォーム」ナレッジ分科会では、環境省国際協力室の東海林国際協力専門官、JICA気候変動対策室の佐藤副室長及び林野庁海外林業協力室の大仲課長補佐の3名のGCF理事会関係者をお招きし、REDDプラス支援においても主要な役割が期待されているGCFの取組みの進捗について、網羅的にご発表頂きました。ここでは当日の主な発表内容を報告します。

環境省 地球環境局 国際連携課国際協力室 東海林珠代 国際協力専門官
「気候資金と緑の気候基金(GCF)の基本情報」

東海林珠代
(環境省地球環境局国際連携課国際協力室 国際協力専門官)

国連気候変動枠組条約(UNFCCC)において、「気候資金」とは何か、明確に定義はされてはいません。UNFCCC・パリ協定の下では、GCFの他、地球環境ファシリティ(GEF)も気候変動対策を支援する基金として位置づけられています。また、京都議定書の下で設置された適応基金がパリ協定の下に入るかどうかについても現在議論されています。

GCFの運営についての最高意思決定機関は、先進国及び途上国からの代表で構成された理事会であり、日本は単独で理事席を有しています。理事会ではコンセンサスによる意思決定を原則として、実施機関候補の登録承認や支援案件を承認します。

GCFの資金供与額は、適応対策分野(気候強靭性の強化)と緩和対策分野(温室効果ガス削減)の2分野に等しく配分されることを原則としており、前者の支援対象は、生態系・生態系サービス、インフラ・建築環境、健康・食料・水の安全、住民・コミュニティの生計向上など、後者の支援対象は、発電・エネルギーアクセス向上、交通、建物・都市・産業・家電、森林・土地利用となっています。また前者(適応対策用)の資金の半分は、後発開発途上国(LDCs)、小島嶼開発途上国(SIDS)、アフリカ諸国といった、気候変動に特に脆弱な国々に配分することを目指しています。これまで採択された事業の約9割は、総事業費が1,000万米ドル以上の事業となっており、資金供与方法は、贈与、融資、保証、出資の4つとなっています。

AE(Accredited Entities: 認証機関)とは、GCFへのプロジェクトプロポーザルの提出、GCFへ資金支援の要請、プロジェクト監理・指導、そしてプロジェクトへの資金提供を実施することができる機関です。AEになることができる機関・組織は、国、準国、地域、国際レベルの公的機関・民間組織及びNGOであり、日本では国際協力機構(JICA)や三菱東京UFJ銀行が承認されました。第17回理事会までに認証されたAEは、合計54機関となっています。

GCFによる支援メニューは、上述の適応や緩和対策プロジェクトへの資金支援のほか、途上国の国家指定機関(NDA)やAEが効果的にGCF支援を活用できるよう能力強化を目指す「レディネス支援プログラム」、AEによるGCFプロジェクトの案件形成・準備を支援する「プロジェクト準備ファシリティ」、民間プロジェクトに対して資金を提供し、機関投資家の動員を含む民間からの協調融資を促進する「民間セクターファシリティ」などが挙げられます。

独立行政法人 国際協力機構(JICA)気候変動対策室 佐藤一朗副室長
「緑の気候基金(GCF)の活用について」

佐藤一朗
(独立行政法人国際協力機構気候変動対策室 副室長)

日本政府は、GCFの資金が「防災」、「小島嶼開発途上国(SIDS)支援」「先進技術活用」に充分活用されることを重視しています。JICAのGCF案件を形成においても、この3つのいずれかに合致する案件を優先する方針を掲げています。

JICAのGCF資金の活用方法として、GCF資金を (1) 気候変動対策の追加コストに充当する、(2) 事業のリスク削減に使う、(3) JICA技術協力の効果拡大・スケールアップに活用する、という3つのケースが想定されます。

案件形成にあたり、資金面において留意すべき点には次のようなものが挙げられます。JICAがGCF資金を活用して供与できるのは贈与(返還条件付き贈与も含む)のみであり、借款、出資、保証は供与できない点や、GCFからの供与額に特に上限や下限はないものの、贈与のみの案件の場合、これまでの承認案件の贈与額の幅は6.2~109.6百万米ドルとなっていますが、100百万米ドル規模の贈与案件は、きわめて厳しく審査される点です。なお、JICAのような国際開発機関の場合、GCF資金のみで案件を実施することは恐らく許されず、JICA資金や他のステークホルダーの資金による協調ファイナンスを組み込むことが基本となります。

次に、案件形成においては、プロジェクト型案件のほか、複数プロジェクトを束ねたプログラム型案件も可能です。このプログラム型案件には、複数国を対象とした地域プログラムも含みます。いずれのアプローチをとるにせよ、案件形成の初期段階から、途上国政府におけるGCFとの窓口となる国家指定機関(NDA)/フォーカルポイントとの綿密な協議が必須となります。またGender Action Planの作成が必須となるので、案件形成調査へのジェンダー専門家の参加が推奨されます。さらに、GCF理事会でよく議論になることから留意すべき点は、提案案件に革新性(Transformation/Paradigm shift)の要素があるか、GCFが資金供与する必然性(単なる開発事業とどう違うか、気候変動対策のための追加コストについての説明、正当化など)、そして社会的弱者や持続可能性へ十分な配慮がなされているかといった点になります。

林野庁森林整備部計画課海外林業協力室 大仲幸作課長補佐
「GCF理事会におけるREDDプラス議題の検討状況等について」

大仲幸作
(林野庁森林整備部計画課海外林業協力室 課長補佐)

2016年10月の第14回GCF理事会では、GCFとして、REDDプラスの成果支払いを含む全フェーズに対し支援していくことが決定されました。こうした中、2017年7月に開催された第17回理事会では、(1) GCFの既存のスキームを活用したREDDプラスの初期フェーズ支援のあり方及び(2) REDDプラスの成果支払いの実施ルールについて検討され、(1) は決定に至りましたが、(2) については3ヶ月後に開催される第18回理事会にて再度検討することとなりました。

(1) REDDプラスの初期フェーズ支援に係る議題では、他のプログラム(国連、世銀、二国間支援等)との補完性や調和に留意しつつ、Readiness Preparation FacilitiesやProject Preparation FacilitiesなどGCFの既存プログラムを通じて、REDDプラスホスト国のREDDプラス戦略の策定、森林参照レベルの設定やMRV体制の構築等の支援、そしてREDDプラスの実施に係る案件形成を積極的に行っていくことが決定されました。また、民間セクターの参画を促す基金であるPrivate Sector FacilitiesをREDDプラス活動にも積極的に活用していくことも関連文書の中で提案されました。

(2) REDDプラスの成果支払いの実施ルールについては、支払い単価や予算総額、支払い対象期間などが主な論点となっています。第17回理事会では、これらをセットで決定することを多くの理事国が求めたため、決定が見送られることとなりました。また、成果支払いの申請は、途上国政府ではなく途上国政府の同意を得たAEが行うなど、カンクン合意やワルシャワ枠組みといったUNFCCCの下での合意事項はもとより、GCFの政策とも整合性を確保しながらREDDプラスの成果支払いを運用する必要が出てきました。成果支払いの実施ルールに係る検討に時間を要している理由としては、GCF理事会の主な役割が実施機関候補の登録承認や支援案件の承認である中で、REDDプラスの技術的要素を含む課題を検討する体制が十分でないこと、先進国グループと途上国グループの間で意見が大きく異なっていることが挙げられます。

こうした一連の議論を経て、排出削減の成果は、GCF等に移転されず、途上国の排出削減目標(NDCs)に活用されることは、理事国等の間でほぼコンセンサスが得られています。しかし、これら実施ルールの各要素は、あくまでもパイロット(試行)段階のものとして決定されようとしており、今後の本格実施に係るルールまで予断しないことについても関係国の間で確認されていることに留意する必要があります。

最後の質疑応答セッションでは、会場との活発な意見交換が行われました。民間企業、一般財団・社団法人、政府関係者、NGO/NPO、研究・教育機関等、様々な分野の皆様から、90名以上の参加がありました。

当日の発表スライドはこちらからダウンロード頂けます(会員のみ)。

(文責:森林総合研究所 国際連携・気候変動研究拠点 江原誠)

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